生前整理とは、大量の家財や思い入れのあるものを「残す・残さない」にわけます!
「でも、整理の勢いにまかせて大切なものを処分してしまい、後で後悔するんじゃ……」
誰でも、生前整理を始めたからといって、いきなり「もの」に対する執着や思い入れから解放されるわけではありません。そんな不安が出てくるのは人情というもの。
それならば、断捨離の選択肢に、
いまこの段階で捨てるか捨てないか判断できないもの
という選択肢を作るのも手です。
まず頭の中で家財や身の回り品を以下の4つのカテゴリに分類してみましょう。
- 今の生活に必要なもの
- 今の生活に使えないもの
- 今の生活に必要ではないが、まだ使えて今後必要になるかもしれないもの
- 今の生活に必要ではないが、思い入れがあり残しておきたいもの
ぱっと分けられましたか? 少し悩んだでしょうか?
1、今の生活に必要なもの
今の生活に必要なものについて悩みどころはないでしょう。突然、壊れたりなくなったりしたら、途方に暮れるであろうもののことは、災害のニュースを見ても明らかですね。
2、今の生活に使えないもの
今の生活に使えないもののゴミに相当するものもたくさん思いついたのではないでしょうか。壊れたままなんとなく放置しているビデオデッキ、ガレージに積んだままの廃タイヤや錆びたゴルフクラブセット。幸い場所に困らないから置いてあるだけで、「誰か持っていってくれないかな…」とひそかに願ってしまうようなものは間違いなくゴミです。該当の自治体の粗大ごみ回収や業者に処分をお願いしましょう。
3、今の生活に必要ではないが、まだ使えて今後必要になるかもしれないもの
今の生活に必要ではないが、まだ使えて今後必要になるかもしれないものは曲者です。いつ誰にもらったか覚えていない引き出物の食器セット、化粧箱から出していないタオルセット。「平成に入ってから買ったし新しいはず」の冠婚葬祭のドレスや靴やコート類…これらは、そう呼ぶと心が痛みますがほとんど「ゴミ」です。
印刷されたよく知らないブランド名につられますが、古い消耗品なのです。
色あせた型落ち品を「誰かにあげて喜んでもらおう」は考えものです。
そもそも、断捨離中の知り合いから「よかったら使って」ともらった古いブランドもの、一度も使わずCに入れていませんか?
これらは「もう使えないもの」と割り切りましょう。何年も手に取らずにいて差し支えなく暮らしていたもの、それはおそらく「今後も必要にならないもの」なのです。
これらの処分には費用もほとんどかからず、もらう相手の気持ちを考える必要がないだけ気楽です。バザーに寄付すればもしかしたら然るべき人の手に渡るかもしれません。
不用品回収業者が引き取ったものの中には、実は型落ちでも海外で活躍するものもあります。
最近では、デパート内のアパレルショップで古着のリサイクルボックスを備えつけているところもあります。不用品がどこかで役に立つと分かれば、気持ちよく処分できそうですね。
4、今の生活に必要ではないが、思い入れがあり残しておきたいもの
今の生活に必要ではないが、思い入れがあり残しておきたいものには何が当たるでしょうか。飽きたり体を痛めたりして数年はプレイしていないスポーツの用具。ゴルフ、登山、釣り、バイク、サイクリング。ずいぶん凝った用具もあるでしょう。
Bに挙げたように錆びたりせずメンテナンス状態が良ければ、スポーツギアもこちらのカテゴリに入ります。同好の士が必要としてくれるかもしれません!
食器・アクセサリー・家具・美術品など、限定品や作家物を長年に渡り熱心に蒐集したもの。
人生の節目・節目で記念に買い集めていったものもあるでしょう。
貴金属が使われていなくても、価値がわかる人にはわかるアイテムがありますよね。
しかし、わからない人には本当に価値がわからないのもこのジャンルの特徴です。
では、大切なDはどうやって遺しましょうか?
思い入れがあるものは、まず「譲る」
宝石類や高価な時計、絵画をはじめとする美術品、アンティークな家具など、資産価値があるもので譲ることができるものは、どんどん譲っていきましょう。
遺言書に誰に何を譲るか事細かに記しておくよりも、自分がまだ元気なうちにものを譲っていくほうが確実ですし、譲られたほうからも喜ばれます。
1年間に金額にして110万円を越えるものを譲らない限り、贈与税は発生しません。
土地や家屋や自動車などは贈与税の対象になり得ますが、金額にして110万円を下回るものの贈与は、いわゆる「プレゼント」です。
人が誰かにプレゼントすることを制限するような税法や法律はありません。
もともと、「この品物はあの人にあげよう」と決めているようなものがあれば、生前整理をきっかけに一気に譲ってしまいましょう。
また、生前整理を始める前に家族や親戚の人たちに向けて情報発信することも有効です。
子どもたちや親戚たちに向け、
「これから生前整理をするけど、捨ててほしくないものない?(欲しいものはない?)」
と呼びかけます。
あなたの持ち物のなかで、「あれがほしい」と思っていた人が手を挙げてくれるかも知れません。
とにかく身の回りの品々が人の手に渡ることで自分はすっきりし、相手には喜ばれるのですから、こんなにいいことはありません。
しかし、それでも手元に残ってしまう品物もありますね。
たとえばファッションやアクセサリーにはデザインの流行り廃りがあり資産価値もないことから、子どもの世代も贈られてもあまり喜ばないかもしれません。
時計、毛皮のコートなども同様です。
また、高価なゴルフクラブのセットを持っているけど、子どもや親戚にゴルフをする人がいないこともあります。
絵画などの美術品を大量に有している場合も、自分が持て余すような代物はまず、家族の人も喜んでくれないでしょう。
ただ、身近な人があなたの所有物に興味を示さなくても、その品物に価値があれば、売ることができます。
価値がありそうなものは、どんどんお金にしていきましょう。
質屋を利用する
近年は質屋業界もかつての、なんとなく後ろ暗いイメージを脱ぎ捨て、「ブランドショップ」「リサイクルショップ」というような名前で業務展開しています。
とはいえ、質屋は品物を担保にお金を融資する、という業態なので、厳密に言うと古物商とは違って「ものを買い取る」わけではありません。
しかし「ブランドショップ」「リサイクルショップ」と銘打っている昨今の質屋は、返済期間中にお金の返済がなかった品物を市場に流す(いわゆる質流れ)を前提としており、利用する人々もほとんど古物商と同じ感覚で利用しています。
質屋に売りに出すのにお金になりやすいのはアクセサリーや時計、バッグや衣類など、いわゆる「ブランド商品」です。
質屋のホームページなどを見ていると、「ブランド鑑定士」が品物の鑑定を行う、というような文言がありますが、実は「ブランド鑑定士」という公的な資格は存在しません。
ただ、質屋は独自のノウハウを持っており、品物の市場価値を正確に判断します。
ブランドの真贋を見分ける目もあり、その専門性の高さが質屋の強みです。
直接店舗に持ち込むのもいいですが、品物が数多い場合、出張査定を頼むこともできます。
質屋の担当者は、品物を一つひとつ確認し、見積もりを作ってくれます。
見積もりにより手元にある品々の市場価格がはっきりするので、もちろんそのまま質屋に預けることもできますが、価格を知ったうえで他の人に譲ることもできます。
また、価値のつかないものは安心して処分することができます。
また、質屋は質屋営業法により、引き取った商品を3ヶ月間保管しておくことを義務付けられています。
たとえば、質屋に手渡してから「やっぱりあの品物、手元に残したい…」と心変わりしたような場合は、3ヶ月以内なら質屋が支払った額プラス利子のお金を払うことで、商品を取り戻すことができます。
質屋の利子は上限月9%と決められています。
古物商・リサイクルショップを利用する。
宝石や着物、美術品など希少性の高いものは、それぞれに専門特化した買い取り専門店に評価を依頼したほうが高い評価額を得られます。
また、古物商やリサイクルショップは、まず幅広いジャンルの品物を引き取ってくれることがメリットです。たとえブランド品ではなくても、家具やゴルフクラブ、釣具、絵画などの美術品、趣味で集めていた模型などのホビーグッズなど、あらゆるものが買い取り対象です。
これらの古物商・リサイクルショップも買い取り出張を行っており、質屋と同じく基本的に見積もりは料金不要です。
あまり買い取り価格にこだわらず、一気にものをお金に替えたい場合は非常に便利です。
たとえば家電製品やパソコン、ステレオなど、多少修理すれば仕えるものは買い取ってもらえる場合もあり、転居の際は非常にありがたい存在です。
古物商やリサイクルショップにも質屋と同じく、専門の鑑定士がいる場合があります。
とくに、美術品や陶磁器、アンティークな家具などの骨董品、刀剣や鎧兜などの鑑定は一般的に「美術鑑定士」と呼ばれる専門のプロが鑑定を行います。
テレビの人気番組「なんでも鑑定団」に登場するような鑑定士たちです。
ただ、この「美術鑑定士」もまた、質屋の場合の「ブランド鑑定士」と同じように、公的な資格ではありません。多くの場合、美術鑑定士は経験を積んだ鑑定士のもとで修行を積み、実績と審美眼を養ってきた人たちです。
また宝石などの場合、「宝石鑑定士」資格を持つ人がいますが、これもまたさまざまな教育機関や団体が掲げている民間資格です。
だからと言って信用できない、というわけではありませんが、「鑑定士」にはそれぞれ得意分野があることは事実。
「とにかく家のなかの不用品をなんとかしたい! それに値段がついたら儲けもの!」
というふうに、「とにかく一気に処分したい」と思っている方は、古物商やリサイクルショップに一括して頼むのがいいかも知れません。
ただ、リサイクルショップのなかには悪質な業者が少なからずあるのでご注意ください。
とくに、連絡した覚えもないのに向こうからいきなり電話を掛けてきて「不要な品はございませんでしょうか? 出張買い取りいたします!」と営業をかけてくるような業者は危険です。
こうした業者は出張買い取りを名目に、家に押しかけてきてはあらゆる品物を安く買い叩こうとする可能性が高く、行政指導が入った例もたくさんあります。
靴一足から買うという触れ込みでやってきたのに、実際には金やプラチナ製品を出すまで帰ろうとせず恫喝する、いわゆる「押し買い」業者がいるのです。
古物商・リサイクルショップは営業電話に応じるのではなく、業者の評価をよく調べて自分で選びましょう。
ネットオークションやフリマアプリを利用する
質屋や古物商・リサイクルショップに品物を引き取ってもらえば、お金になるばかりか、自分の品物がどこかの誰かにまた使用されることになります。
ただ捨てたり処分したりしてしまうより、あなたの所有物に価値を見出してくれた誰かが、それを使ってくれていると考えるとうれしいものですね。
子どもや親族が興味を示さないものでも、知らない誰かにとっては喉から手がでるほど欲しいものであることはよくあります。
本当に品物に価値を感じ、欲しいと思ってくれる人の手に渡ってほしい…
そう願う場合、質屋や古物商・リサイクルショップよりも、もっと楽しめる手段があります。
・ネットオークション「ヤフオク!」
ネットオークションはさまざまな種類がありますが、いまはポータルサイトのヤフーが運営している「ヤフーネットオークション」、通称「ヤフオク!」が圧倒的シェアを占めています。
もうすでに「ヤフオク!」を始められている方もいらっしゃるかと思いますが、はじめ方は簡単。
ヤフープレミアム会員(有料:月額会員費462円 税抜)に登録し、本人確認の手続きを行います。その後、落札代金を受け取るための「Yahooかんたん決済」の受付口座を登録。そして、オークションに出したい品物の画像と説明文を用意し、さまざまなカテゴリがあるので、出したい商品のカテゴリを選んでアップロードするだけです。
期日までにどれだけ入札価格が上がるかを楽しむのが「ヤフオク!」の醍醐味。
商品紹介のタイトルや説明文、何よりアップロードする写真で品物の魅力を打ち出すことがポイントです。事前にヤフオクで出したい商品の相場を把握しておくことも大切です。最低落札価格を設定しておけば、納得できない価格で落札されることもありません。
意外な高値で入札されることも多く、生前整理が一段落した段階で始めれば、オークション自体が楽しみになるかも知れません。
実は「ヤフオク!」では、海外富裕層のために代理入札を行う日本人代行業者がアカウントを持っていることも多いのです。そのため、日本の質屋では買い叩かれる、または買い取り値段がつかず悔しい思いをするようなヴィンテージジュエリーが、外国での市場価値で落札されることがあります。世界的にコレクターに人気がある商品を、eBayなどの海外オークションサイトを使わなくても外国人富裕層に売れるのは面白いですね。
また、オークションを経ずに自分が設定した金額で即、売りに出したいときは「フリマ出品」を行うこともできます。こちらの場合、高額になることはありませんが、効率よくものを処分していきたいときには便利です。
フリマアプリ「メルカリ」
現在、さまざまなフリマアプリが登場していますが、代表的なものはやはり「メルカリ」です。
「ヤフオク!」のようなネットオークションとの違いは、あらかじめ価格を設定して出品した商品を「早いもの勝ち」で欲しい人に売ることです。
始めるのは「ヤフオク!」よりもさらに簡単。スマホ、もしくはパソコンに専用アプリをダウンロードし、アカウント登録をして商品を売りに出すだけ。
こちらは「ヤフオク!」のように登録料不要です。ただ、取引された商品の代金の10%が「メルカリ」運営に差し引かれることになっています。
スマホに特化しており、始めやすいことから、「ヤフオク!」に比べて「メルカリ」はずっと初心者に向いていると言えます。気軽に「コメント」で質問が来るので、LINEのやり取りに慣れている方に向いています。
「メルカリ」に出品した場合、購入希望者が「価格交渉」を投げかけてくることがあります。
いわゆる、値引きのお願いです。現実のフリーマーケットや蚤の市と、その点は似ていますね。
別に値引きに応じるつもりがなければ応じなくてもいいのですが、値引きを想定してある程度、高めの料金設定をしておくと無難でしょう。
プロフィール欄に値下げ不可と予め記載して、売れなければ価格を設定し直すのもいいでしょう。
また、あまりに低い価格に設定にすると、かえってしつこい値引き依頼が続く傾向があるので、気持ちのよい取引をするためにもやはり相場は調べておきましょう。
「メルカリ」もあらゆる年齢層に浸透してきてはいますが、ヴィンテージ・アンティークアイテムに価値を見出す世代には広まっていないので、そういう品はなかなか買い手がつかない傾向があります。ヴィンテージ品は「ヤフオク」をおすすめします。
地元の掲示板「ジモティー」
「ヤフオク!」も「メルカリ」も、自分の持ち物のうちで買ってほしいものを不特定多数の人に提示して利益を得ることは同じですが、双方とも落札者や購入者に品物を梱包・発送するのに結構な手間がかかります。
地元の無料広告掲示板サイト「ジモティー」は、イベントや求人募集、ペットの里親探し、教室・スクール紹介などの情報を、自分の住んでいる地域に特化して発信できる情報交換サイト。
なかでも、品物の売買によく利用されています。
利用方法は「メルカリ」よりもさらに簡単。「ジモティー」サイトに登録を行い、売りたい商品の写真と情報をアップするだけです。もちろん登録料は不要。商品の売買は完全に登録者同士の直接取引になるため、「ジモティー」運営側から手数料を取られるようなことはありません。
「ジモティー」の特異点は、品物の受け渡しを「手渡し」で行うことです。
持ち運びできるような品物の場合は、最寄りの駅などで待ち合わせし、その場で手渡しすることができます。そのため、「ヤフオク!」や「メルカリ」で商品を宅急便や郵送で発送するときのような厳重な梱包も不要です。
また、家具など大きな品物の場合は、買い手の人に車で自宅まで来てもらうこともできます。
自転車や大型家電、さらには自動車まで、持ち運びや発送にコストがかかる品物に強いのがポイントです。
買い手と直接顔を合わせて取引ができるため、その場で商品を見てもらうことができ、かつ喜んでもらえるのは「ジモティー」の楽しさです。
事実、「ヤフオク!」や「メルカリ」よりも、高齢の方によく利用されているようです。
ただ、自分のプライバシーを他者に教えたくない…という方には不向きかも知れません。
オークションサービス代行も
一気に品物を整理してしまいたい場合、オークション代行サービスに頼るという方法もあります。
近年は「ヤフオク!」のオークションにあたっての出品・入札価格管理・落札後の発送をすべて代行してくれるネットオークション代行業者も増加しています。
入札額に応じて手数料の割合が変わってくる仕組みになっており、そのぶんコストは掛かりますが、商品が高額で取引された場合、思わぬ収入が望める可能性があります。
ネットオークションではなく、美術品や骨董品、アンティーク家具など比較的価値が高い品物を、業者同士の交換会、美術商が集まる美術倶楽部、公開オークションなどに出品代行を行う業者もあります。こちらもまた、落札金額に応じて手数料を支払う仕組みです。
ものの価値はずっと生き続けます
生前整理では多くのものを手放すことになります。
しかし、自分が愛着を感じていたもの、大切にしていたものが、他の誰かにとっては「今」ほしいものであるかもしれません。
そうして、自分の「もの」への思いは他者に引き継がれていきます。
これは品物を売ってそのお金を得るよりも、大切なことなのかも知れません。
生前整理を行う際は、自分で行う場合も業者にお願いする場合も、ものの処分にはいくつもの選択肢があります。
何が必要で、何が不要か。
不要なものの中で、人に譲りたいものはなにか。売ってしまいたいものは何か。
そして、「売る」という判断をしたときに、どのように売りたいのか。
生前整理業者選びででは、クライアントの要望をしっかり聞き、柔軟に対応してくれる業者を選びましょう。
あなたのこれまでの「人生の整理」です。
どうせなら楽しく、価値を実感できるものにしたいですね。